『mame-sadou.com』にようこそ、表千家流の茶道講師・やましたです!
映画『利休にたずねよ』の感想を書きました。
『利休にたずねよ』は、茶道を大成したとされる千利休の生涯を断片的に描いた、山本兼一さんの同名小説を原作とする、市川海老蔵さん主演の映画です。
公開が2013年で今更感がありますが、、前から気になっていて、やっと見ることができたので記事にします!
あまりネタバレにならないようには気をつけているのですが、どうしても少し内容に触れる部分があるので
ネタバレが気になる方は読まれないようにお願いします!
『利休にたずねよ』:あらすじ
3,000もの兵に取り囲まれ、雨嵐の雷鳴が辺り一帯に響き渡る中、豊臣秀吉(大森南朋)の命によって切腹しようとする茶人・千利休(市川海老蔵)の姿があった。ついに覚悟を決めて刃を腹に突き立てようとする彼に、利休夫人の宗恩(中谷美紀)は「自分以外の思い人がいたのではないか?」という、かねてから夫に抱いていた疑念をぶつける。その言葉を受けた利休は、10代から今日に至るまでの波瀾(はらん)万丈な道のりを思い出していく。
Yahoo!映画ー『利休にたずねよ』
「この時はこんなことがあった」
「さらに時が進むとさらにこんなことがあった」
というように、断片的にお茶会のシーンを中心に描き出されていきます
『利休にたずねよ』:感想
『利休にたずねよ』の感想、以下、「・・うーん」と思った点と良かった点をそれぞれ書いていきます。
「・・うーん」な点
ストーリーについては、歴史認識の面で違和感を感じる部分が少しあったのですが、ここでは2点挙げます
まず1点目は
史実としては利休の本業は商売で、それは生涯変わらなかったのですが、この映画では、ただひたすら茶の湯を追求する茶人として描かれていたことです
軍事産業を営み、父の代までは貧しかったのが、利休の代に豪商となるまでに成長したといわれています
歴史に忠実に書くなら商人としての利休を描く必要があるでしょうが、そうしないことによって、茶人としての利休だけを抽出した利休像が描かれていました
この映画では、実際の姿を描くことは目的とされず、美術者として理想化された利休が描かれているのです
この点については、茶道の歴史を少し知っていると引っ掛かりを感じるのですが、一つの物語を作る場合にはありなのかなとも思えます
実際にそうすることで、後で述べるように茶の湯の美しい世界にフューチャーした作品に仕上がっています
ただ
違和感を感じた2点目が、この映画を見てもっとも引っかかった部分だったのですが
同じように違和感を感じた方が多いだろうと思う部分です
その美の原点が、女性との悲恋にあった(ネタバレ防止のため詳しくは書けませんが)
というストーリーだったのではないかと思います
この恋というのが実にありきたりな感じで
現在まで400年以上に渡り影響を与え続けている利休の美の原点としては、少し無理があるように感じてしまいました
ということで、ストーリーについては少し賛否が分かれそうな内容と感じました
よかった点
この映画の素晴らしかった部分は、何と言っても映像的な美しさです
お茶会のシーンが多く、その中に描かれるのは
- 水から揚げたばかりの椿が入っている美しさ
- 海老蔵利休の洗練された指先で触れられる茶碗の美しさ
- 利休の即興の工夫にある、驚きの中の美しさ
当時の人たちが(現代の茶人たちも)心動かされたであろう、茶の湯の世界の美しさが描き出されています
使われた茶道具も、実際に初代・楽長次郎が作った「万代屋黒」をはじめ、本物の名品が多く使われています
あとはやはり、海老蔵さんの洗練された所作の美しさ
特によく言われるお話ですが
映画の撮影は、何回も撮り直されると言われますが
先ほど紹介した『万代屋黒』は貴重な茶碗なので撮影に何回も使えないという話だったそうです
そんな中そのシーンは一発で出来の良い映像が撮れて一発OKだったらしく
海老蔵さんの度胸・この映画に対する気迫というものを感じられるお話です
こうして描き出された茶の湯の世界の美しさは、本当に見る価値ありです!
まとめ
映画『利休にたずねよ』についてまとめますと
・史実から離れたストーリーは賛否が分かれそう
・花や道具、海老蔵利休の所作など、映像化された茶の湯の美しさは一見の価値あり
ストーリーは以上の通りですが、描き出される茶の湯の世界を見ていただくと
茶の湯の美しさが人の心を打ちうるものだということ、これまで500年以上に渡りこの文化が続いてきた理由が
茶道をしていない方にも伝わる映画なのでは、と思います
以上です!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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