『mame-sadou.com』にようこそ、表千家流の茶道講師・やましたです!
「旅箪笥」のお点前・飾り・けんどん蓋の扱いについて解説した記事です。
一般的な棚のお点前ではだいたい、それぞれ棚への飾り方に違いがあるだけなのですが、表千家の旅箪笥のお点前には、飾り方に加えて3パターンあります。
そんな旅箪笥のお点前のうち、最も基本となる水指を出してくる形について、炉と風炉どちらの扱いについても説明しています。
旅箪笥での道具の飾り方、けんどん蓋の扱いについても、画像付きでまとめています、
茶道初心者の方の予習・復習のお役に立てばと作成した記事です。
この記事が、茶道をしているみなさまの、お役にたてば嬉しいです
では早速見ていきましょう!
旅箪笥のお点前の3パターン
地板と棚板の間隔が狭いため、水指は最初の位置のままだと水をすくえません
ですから「旅箪笥」のお点前は、水指の水をすくえるように設計されているのですが
その方法が3パターンあるのです
①最初に水指を手前に引く(画像左)
②「芝点」:下の棚板を取り出す(画像中)
③下の棚板を上の棚板に重ねる(画像右)
この3パターンです
以下、①から見ていきます(②③については↓の記事にまとめています)
「旅箪笥」は風炉でも使えるのですが、主に4月に使いますので、炉の薄茶点前について、今回は解説していきます
他のお点前と共通の部分については下の記事で解説しています!
「水指を手前に引く」お点前の流れ
お点前のはじめ
①お茶碗を持ち出す
まずお茶碗を茶道口に置き一礼し、点前座・棚前に座り、お茶碗を勝手付き(左側)に仮置きします
②けんどん蓋を開ける
けんどん蓋を開けます
(けんどん蓋の扱いについては、この記事の後の方で解説しています)
③水指を点前に引く
水指を点前に引きます
不安定にならないよう注意しながら、水指が棚から3分の1ほど出るくらい出します
④薄茶器と茶碗を置き合わせる
棚板に飾っている薄茶器を一手で、水指前・少し右に置きます
それから、仮置きしていたお茶碗を、薄茶器に置き合わせます
その後建水を持ち込み、以後、普通のお点前です
飾りの崩し方については、この記事の後の方で解説します
お点前の終わり
①普段通りに片付けていく
ほぼ最後まで、一般的な方法で仕舞っていきます
二飾りを作る場合なら柄杓・蓋置・薄茶器を飾り、初飾りなら薄茶器のみ飾り
建水→お茶碗の順で、いつも通り持って帰ります
②水指を棚の中央に戻す
水次やかんを持ち出すと、水指を畳の上・膝前に出してきて、水を注ぎます
水を注ぎ終えると、水指は地板の真ん中(お点前の最初の位置)に戻します
それからけんどん蓋を閉め、水次やかんを持って帰り、お点前を終えます
拝見があった場合は、水次やかんを使い持って帰った後、拝見に出した道具を取りに来て、薄茶器を棚に飾ってから、けんどん蓋を閉めます
「芝点て」のお点前の流れ
棚板を出してきて、畳の上に敷き、その上に薄茶器・茶筅をおきます
旅箪笥は、千利休が戦の際に屋外で使ったものを原型とする、と言われています
「芝点」は、そうした屋外での趣を感じさせるお点前となっています
詳しいお点前の流れは、↓の記事をご覧ください
「下の棚板を上の棚板に重ねる」お点前の流れ
「下の棚板を上の棚板に重ねる点前」のお点前の流れについては、↓の記事をご覧ください
旅箪笥の飾りの作り方・崩し方
旅箪笥の飾りは二飾りまであります
・初飾り(画像左):
水指・薄茶器
・二飾り(画像右):
水指・薄茶器・柄杓・蓋置
柄杓を、棚板の切り込みへ掛けるという、他にない特殊な飾り方になります
初飾り
飾り方
①柄杓・蓋置を仮置きする
水指の蓋を閉めると、棚板を初めの位置に戻す場合は戻してから
柄杓を右手で取り自然に左手で節を裏から持ち、建水に合を落として掛けます
それから蓋置を右手で取り左手に乗せ、棚の前に向き直り、左手で建水下に滑り込ませます
②薄茶器を飾る
お茶碗を左手で取り、右手で仮置きします
それから薄茶器を一手で真ん中の段の中央に飾り、初飾りの完成です
③道具を持って帰る
そして柄杓を左手で取り右手で正面に持ち直し、蓋置を左手で取りこれも右手に持たせ、左手で建水を持ち、水屋に帰り
次に茶碗を持ち帰ります
④けんどん蓋を閉める
水次やかんを持ってきて、水指に水を注ぎ終えると、けんどん蓋を閉め
茶道口で、水次やかんを前に置き一礼し、お点前を終えます
崩し方
最初、お茶碗を持ち出すと仮置きして、けんどん蓋を開けます
「水指を手前に引く」お点前なら、水指を手前に引き、そうでないならそのままで
薄茶器を一手で棚前少し右に置き
仮置きしていたお茶碗を左手で取り、右手を添えて持ち直してから左手で、薄茶器に置き合わせます
これで飾りは崩せたので、以降お点前を進めていきます
二飾り
飾り方
水指の蓋を閉めるところまでは普段のお点前と一緒です(柄杓は飾流ので湯返しをしておきます)
①柄杓を飾る
水指の蓋を閉めると、棚板を初めの位置に戻す場合は戻してから
柄杓を右手で取り自然に左手で節の上あたりを裏(「身」の方)から持ち
右手を離し、柄杓を左手だけで持った状態で、棚板の切り込みに合(すくう部分)の下あたりの柄を掛けるように持っていきます
この時、柄の先(下の方)が先に棚に入るように、傾けた状態で持っていくと、切り込みに入りやすいです
②蓋置を飾る
柄杓を飾ると、蓋置を右手でとり左手に乗せ、棚の方に向き直り
蓋置を右手で上から持ち直し、柄杓の柄の先の地板に飾ります
この時、柄杓の柄の先を、けんどん蓋を閉める時に妨げにならないよう、蓋置で押し込むようにします
③薄茶器を飾る
お茶碗を左手で取り、右手で仮置きし、薄茶器を一手で真ん中の段・中央に飾ります
④道具を持って帰る
柄杓・蓋置・薄茶器を飾り終えると、普通のお点前同様、建水→お茶碗の順に水屋に持って帰ります
⑤けんどん蓋を閉める
水次やかんを持ってきて、水指に水を注ぎ終えると、けんどん蓋を閉め
茶道口で、水次やかんを前に置き一礼し、お点前を終えます
崩し方
①薄茶器を下ろす
最初、お茶碗を持ち出すと仮置きして、けんどん蓋を開けます
「水指を手前に引く」お点前なら、水指を手前に引き、そうでないならそのままで
薄茶器を一手で棚前少し右に置き
仮置きしていたお茶碗を左手で取り、右手を添えて持ち直してから左手で、薄茶器に置き合わせます
②蓋置を崩す
それから建水を持ち出して、棚の正面に座ります
蓋置を右手で取り、左手に乗せて居前に向き直り、右手で炉の脇・いつもの位置に置きます
③柄杓を蓋置に掛ける
柄杓の節のすぐ上あたりを、左手で手前側(身の方)から持ち、合が先に出てくるように傾けて出してくると
自然な形で右手で持ち、蓋置に掛けます
そして最初の礼をして、これで飾りは崩せたので、以降お点前を進めていきます
総飾り
旅箪笥では、以下のような形に「総飾り」ができます
手順に関しては、以下の記事をご参照ください
けんどん蓋の扱い
けんどん蓋を開ける時の手順は以下のようになります
①掛け金を抜く
右手で掛け金を抜き、けんどん蓋手前の座金の壺に差し込みます(画像左→画像右)
②けんどん蓋を外す
右手を、掛け金を手前から摘むように持ち替え、そのまま少し引っ張ります
すると、けんどん蓋が少し手前に倒れてきますので
けんどん蓋の左側・上から3分の1の位置を左手で、右手で上側・引き金の右横を右手で持ち
両手で少し持ち上げ、けんどん蓋を外します
③けんどん蓋を立て掛ける
両手で持ったまま、立て掛ける向き(引き金が棚に当たる向き)にかえつつ、左膝横あたりに移動します
右手を離し左手だけで持ち、棚に立てかけます
けんどん蓋を閉める時は、これと逆の動きをしていけば大丈夫です!
旅箪笥のお点前:まとめ
ということで、旅箪笥のお点前についてまとめますと
・飾り方意外に、3パターンのお点前ができる
①最初に水指を手前に引く
②「芝点」
③下の棚板を上の棚板に重ねる
・飾りは二飾りまであり、二飾りでは、柄杓を板の切り込みに掛ける
・けんどん蓋の扱いも、他の棚にない大きな特徴
3パターンのお点前ができ、けんどん蓋の扱いがあり、と非常に個性ある棚で、お稽古をしていても楽しい棚です
以上です!
この記事が、旅箪笥のお点前について調べているみなさまの、お役に立ったならば嬉しく思います
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
旅箪笥の2つのお点前「芝点」「棚板を重ねる点前」については、↓の記事をご覧ください!